弁護士 内藤 幸徳
東京弁護士会
この記事の執筆者:弁護士 内藤 幸徳
東京弁護士会 高齢者・障害者の権利に関する特別委員会委員副委員長。 祖母の介護をしながら司法試験に合格した経緯から、弁護士登録後、相続、成年後見等、多くの高齢者問題に取り組む。 また、賠償責任の実績が多く、特に交通事故は、年間200件を超える対応実績がある。 医療機関の法務に強く、医療・法務の架け橋になれる弁護士として活動している。
1 後遺症とは?
交通事故における後遺症とは「症状固定後も残存する症状」などを言います。
後遺症として認定されると①入通院慰謝料とは“別に”後遺症自体への慰謝料と②逸失利益(稼働能力喪失に伴う、将来の減収分)の請求が可能となります。
後遺症の認定がなされる否かで、賠償額に100万円以上差額が生じることから、後遺症認定の有無は極めて重要な要素となります。
但し、治療終了後、症状が残存するケースのすべてが後遺症とはならないことに注意が必要です。
2 むちうちとは?
交通事故の被害に遭われた場合、多くの方が発症するのが「むちうち」の症状です。「むちうち」は一般名称であり、診断書等には「頚椎捻挫」、「外傷性頸部症候群」などの記載がなされることが多いです。
同じ「むちうち」の方でも、後遺症が認定されるケースとそうでないケースがあります。
3 むちうちで考えられる後遺症
むちうちで認定され得る後遺症としては①「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級13号)②「局部に神経症状を残すもの」(14級9号)があります。
いずれも神経症状ですが①はレントゲンやMRI等の画像所見等、他覚的所見から自覚症状を説明可能な場合であるのに対し、②は他覚的所見までは認められないものの、神経学的検査の結果が陽性、症状が一貫している場合等に認定されることがあります。
4 後遺症が認定された場合の賠償額
後遺症が認定されると①後遺症慰謝料と②逸失利益という費目の請求が可能となります。
- 後遺症慰謝料とは、後遺症が残存したこと自体に対する慰謝料であり、入通院慰謝料とは別に支払われる慰謝料となります。
14級で110万円、12級では290万円、となります。 - 逸失利益とは、後遺症の影響により、稼働能力が失われたことにより生じる減収分、となります。
具体的には以下の計算式で計算されます。
基礎収入とは、被害者の年収のことであり、一般的には、事故前年度の源泉徴収票や確定申告書から算出します。
労働能力喪失率は、労働基準局長通牒を目安に計算され、14級で5%、12級で14%とされます。
但し、後遺症の内容とお仕事の内容により変動することがあります。
労働喪失期間とは、将来の減収が何年間生じるか、という問題です。
むちうちによる神経症状の場合、14級は5年、12級は10年程度、とされることが多いです。
例えば、14級9号の後遺症が認定された、基礎収入500万円の方がいたとします。
後遺症による損害は① 後遺症慰謝料 110万円 ② 逸失利益:500万円 × 0.05 × 4,5797(5年間に相当するライプニッツ係数)=114万4925円となり、合計224万4925円、となります。
繰り返しになりますが、上記金額は、後遺症に関する損害のみ、となりますので、これらの他、①治療費②通院交通費③入通院慰謝料④休業損害等も損害として請求可能です。
5 後遺症の認定を受けるために、気を付けること
治療期間の長さと後遺症認定は、正の相関関係にあることは間違いありません。
具体的には、概ね6か月以上の通院が必要とされます。
また、後遺症の認定を受けるため、「後遺障害診断書」という診断書を主治医の先生に記載してもらいます。
この記載内容が後遺症認定において極めて重要となります。
後遺障害診断書は、後遺障害が認定されるための要件など、自賠責法などの法律分野に精通している必要がある一方、診断書上、どのような記載をすれば良いか悩まれる医師の先生方も多いと聞きます。
このように、後遺症の認定には、法務・医学双方に精通した専門家に依頼をすることが極めて重要となります。
6 吉祥寺内藤法律事務所でサポートできること
吉祥寺内藤法律事務所は、法務・医療双方に高い専門性を有することを最大の特徴としています。
具体的には、後遺障害診断書作成時に先んじて、医師と面談をし、どのような観点に対する医学的意見を聞きたいのか伝えることにより、適切な損害賠償を受けるサポートをすることが可能です。
実務上、後遺障害診断書を多く拝見しますが、他覚的(医学的)知見を記載すべき欄に自覚症状が記載されているのみであるなど、適切なサポートを受けられていないことで、後遺症が認定されていないと思われるケースも散見されます。
このような事態を避けるために、是非お気軽にご相談ください。



